2012年8月2日木曜日

僕の話(ホームレスになる直前)

なかなか就職が見つからなかった僕は、

以前の仕事仲間、中谷が経営している会社に社員として入社しました。


入社後、僕は営業部の主任という形で勤務を開始した。

NTTを辞めて入社して来た人や、

同業他社から引き抜いて来た人もいて、

以前より中谷はやる気になっている様に見えた。


休みは週一回だが、何曜日に休むのかを割と自由に決めれたので、

就職活動を再開したい僕には丁度良かった。


社員として入社した以上、辞めるまでは全力で働きたかった。

毎日遅くまで外回りをし、帰社してからデスクワークをし、

家に帰ってからも仕事をした。


中谷も、以前の様なサボり癖はあまり出てなく、

毎日頑張っている様だったので、少し安心した。


だが。

一ヶ月目の給与が支払われない。


昔の仕事仲間にあまり金、金と言いたくはないが、

こっちも社員として毎日働いている以上、

もらうべきものはもらわなくてはならない。

こっちにも生活があるのだ。

引っ越したばかりで貯蓄もあまり無かった。


結局、家賃、ガス、電気代、携帯代の請求書を中谷に見せ、

代わりに払ってもらう事になった。

生活費として、一週間で3000円~5000円程度もらった。


お金が回っていない様には見えなかった。

僕が入社する前も、

給与はきちんと払うという約束だった。


一瞬、「辞めよう」と思ったが、

辞めたら辞めたで、生活が出来ない。

一週間分の生活費も無い状態で、イキナリ辞める訳にはいかなかった。

それに、辞めた後、未払いの給料が払ってもらえるかどうかという不安があった。


勤務して二ヶ月が過ぎた頃、

中谷がお金を渡すのを渋り出してきた。

おかしい。

売上はどこに行ってるんだろう。

相変わらず家賃等は中谷に払ってもらっていたので、

僕はどんどん身動きが取れなくなって行った。


中谷の仕事の仕方は好きじゃなかったが、

普段は仲が良かったし、信頼もしていた。

まさか裏切られるのだろうか。

そういう考えが頭をよぎる様になった。


入社して三ヶ月少し経った頃。

全くお金がもらえなくなった。

携帯が止まり、ガスも止まりそうだった。

食事は一日一食になった。

米を買うお金も無く、

うどんやカップラーメンを食べる様になった。

毎日働いているのにお金が無いという状況は、

全く意味が分からなかった。


もうその頃から僕は会社に行かなくなった。

そこまでして中谷の会社で働く必要性が無かった。

毎日毎日お金の催促をした。

払ってもらわなければ死んでしまう。


会社に行かなくなって一週間程度経過した後、

中谷から、

「ポストにお金を入れといたから」というメールが来た。

すぐにポストに走りたかったが、

もう2日も何も食べてなかったので、のそのそと歩いていった。


ポストに入っていたのは三万円だけだった。

信じられなかった。

すぐに電話代を払って電話をした。

「給料はどうなってる?」と問い詰めると、

「そんな最初の頃の話を持ちだして来られても困る」と。


全てがどうでも良くなった。

最初から払わないつもりで雇ったのかもしれない。

売上を持ち逃げするつもりだろうか。


もう話をするのも馬鹿らしくなって、すぐに電話を切った。

とりあえず、とりあえず当面の生活費は出来た。

一週間は生活出来るだろう。

すぐに仕事を探した。

幸運な事に、製菓工場での短期の仕事があった。

給料は週払い。

日当が6000円程度しか無いが、

それでもとりあえずは働いた。

本当はいけない事なのかもしれないが、

週七で働いた。

とりあえずはお金が欲しかった。


製菓工場で働き出してすぐ、ガスが止まった。

未納が続いていた為だ。

この位の時期は、

給料をもらっては支払い、給料をもらっては支払いという状態だった。

製菓工場で働き出して一ヶ月が経とうかという頃、

遅れていた支払いも済ませ、だいぶマシな生活が送れる様になってきた。


そんな頃、中谷からメールが入ってきた。

「管理会社の社長が連絡を取りたがっている。次に入る人も決まってるから、

今月末までに荷物を出す様に」


呆れた。

呆れ果てた。

どういう頭の構造をしているのだろうと思った。


まず、部屋の契約をしているのは僕自身だから、

何か連絡事項があれば僕に直接連絡して来るべきだ。

何らかの事情で部屋を出て行って欲しいのであれば、

キチンとした手続きを踏んで、告知するべきだ。

それが、「次に入居する人も決まっているから」というのはどういう事か。

僕は無視をする事に決めた。

そんな事が出来るハズが無いし、

中谷が何をしたいのかが分からなかった。

何かの駆け引きでもするつもりで、脅して来ているのだろうかとも思った。


管理会社自体は、何年も続いている、割とちゃんとした会社だったので、

もし、何らかの理由で退去して欲しくなったら、

ちゃんと手続きを踏んで来るだろう。

そう思っていた。

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